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札幌地方裁判所 昭和50年(ヲ)428号 決定

申立人 北海プレス工業株式会社

右代表者代表取締役 山岸侃

右代理人弁護士 森越博史

同 藤原栄二

相手方 ほくさんサービス株式会社

右代表者代表取締役 田村敬一

主文

本件異議申立を棄却する。

右申立費用は申立人の負担とする。

理由

第一本件異議申立の趣旨

一、申立人と相手方間の当庁昭和四九年(ヨ)第六九五号仮処分申請事件の執行力ある決定正本にもとづき、当庁執行官が昭和四九年一二月二七日別紙物件目録(1)記載の物件に対してなした仮処分の執行はこれを許さない。

二、申立人と相手方間の当庁昭和四九年(ヨ)第六七一号仮処分申請事件の執行力ある決定正本にもとづき、当庁執行官が昭和四九年一二月二八日および同月二九日別紙物件目録(2)ないし(5)記載の物件に対してなした仮処分の執行はこれを許さない。

との裁判を求める。

第二、本件異議申立の理由

一、当庁執行官は、申立の趣旨掲記の各債務名義にもとづき、同掲記の各日時に同掲記の各物件に対しそれぞれ仮処分の執行をした。

二、しかしながら、右各物件は、いずれも、昭和四九年六月一七日申立人と申立外中小企業金融公庫との間に締結された抵当権変更契約により、申立人所有の工場に設定された工場抵当の目的物となっている。

したがって、右各物件は右工場と共にするものでなければ仮処分の目的とすることができないものであるから(工場抵当法第七条第二項)、右仮処分の執行は違法である。よってその取消しを求める。

第三、当裁判所の判断

一、本件異議申立事件および基本事件である当庁昭和四九年(ヨ)第六九五号、同第六七一号各仮処分申請事件記録によれば、

本件異議申立の趣旨掲記の各仮処分申請事件はいずれも債権者を相手方、債務者を申立人とするものであるが、当裁判所は、(イ)昭和四九年一二月一四日同趣旨第二項掲記の事件につき、債務者の別紙物件目録(2)ないし(4)の物件に対する占有を解き札幌地方裁判所執行官にその保管を命ずる。執行官はその保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。旨決定し、ついで(ロ)同月二五日同趣旨第一項掲記の事件につき、別紙物件目録(1)記載の物件に関し同旨の決定をし、相手方は当庁執行官に対し右各仮処分命令の執行を申立て、当庁執行官は右各仮処分命令に従い同月二七日右(1)の物件につき、次いで同月二八日および二九日の両日にわたり右(2)ないし(4)の物件につき申立人の占有を解いてこれを執行官の保管に移し、これに公示書を貼付して仮処分物件であることを明らかにし、いずれも申請外殖産機工株式会社に保管を委ねた。

以上の事実が認められ右認定に反する証拠はない。

二、さて執行機関である執行官のした執行に対する民訴法第五四四条の異議(本件においては同法第七五六条、第七四八条により準用)は、執行官において判断調査のうえ遵守しなければならない執行の方法又は手続に関し法令違背のある場合にこれをなしうるものであって、執行官において判断調査の権限、職責を有しない事由にもとづいてこれを申立てうるものではない。

ところで本件異議申立は、前記各仮処分命令が工場抵当法第七条二項に違反するとの前提に立ち、その仮処分命令に従ってした執行官の別紙目録記載の各物件に対する執行が違法であると主張するに帰するところ、執行官としては該命令の当、不当を判断調査したうえ執行し又は執行しないという権限も職責も有せず、かえって該命令に従いこれを忠実に執行すべき義責を負うのである。

そうであれば、前記認定のとおり当庁執行官が右各仮処分命令の趣旨に従いこれを執行したことをもって民訴法第五四四条の異議事由とするをえないといわなければならない。

三、よって本件異議申立は失当として棄却を免れず、右申立費用の負担につき民訴法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 藤原昇治)

〈以下省略〉

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